残業代請求を労働基準監督署に相談した体験談

残業代や賃金の未払いなど、労働問題は“労働基準監督署”に相談するもの…というイメージが無いでしょうか?
確かに間違いではないのですが、労基署に相談をしても、解決につながらない場合もあります。

実は、私(筆者)自身、賃金の未払いで労働基準監督署に相談に行ったことがあります。
その時の体験談を通して、「未払い賃金や残業代の請求で、労働基準監督署に行くとどうなるか」を、お伝えしたいと思います。

給料3か月未払い+残業代も払われず…新卒で入社した企業が超絶ブラックでした!

当時、私は新卒で地元の小さなIT企業に就職したのですが、就職して半年ほど経ってから、賃金の未払いが続くようになりました。
社長にも直接問い合わせたのですが、「今、経営が厳しいから待ってくれ、来月には必ず、遅れている分も全額振り込む」と言われるばかりで、一向に支払われません。

できたばかりの小さな会社で、労働組合などもなく、それどころか就業規則なども疎かな状況でした。
そんな状況でどうしようもなく、地元の労働基準監督署に駆け込んだことがあります。

<相談者(私)の状況>

※体験した当時の状況です。

・年齢:23歳
・業種:IT・WEB開発系企業
・会社の従業員数:約10名
・給与:手取り月15万円
・未払い分:給与3か月分+残業代で、約80万円

<労働基準監督署に行く前に私が行ったこと>

社長に掛け合い、事実関係を確認する

いつ話しても、「来月には払う」「今は厳しい」ばかりで、一向に賃金も残業代も払われませんでした。

先輩に相談する

先輩A:「うちの会社は今厳しいから、みんなで頑張ろう」
先輩B:「○○さん(社長)は自分を拾ってくれた恩人だから」
先輩C:「あ、俺は転職決まってるから。未払い給料?諦めて、さっさと逃げたほうが良いよ。」

先輩はみんな、ブラック労働に慣れきってしまっていました。そうでない先輩は、すでに転職で“逃げ切り”体制に。

結局、だれも“未払い給料や残業代を取り戻そう”という気持ちはありませんでした。

給与、残業代の未払い問題で労働監督署に相談に行った結果

労働監督署に行くと、まずはヒアリングシートを記入しました。

書き方がわからない部分もありましたが、労基署のスタッフの方が丁寧に教えてくれたので、あまり困りませんでした。

さて、書類を書いた後、窓口のカウンターに呼ばれて、そこで労基署のスタッフの方と、一対一の面談になりました。
私を担当してくれたスタッフの方は、ややご年配の、優しそうな男性でした。

「給料と残業代の未払いね…。せっかく就職できたのに、こんなことになって、親御さんも心配されてるでしょう。」
「あなたも辛いだろうけれど、ここは頑張りどころだから。」

…と、親身になってくれました。

その場で内容証明郵便を作ることに

さて、相談の結果、私の場合、もう自分で社長に抗議している事もあり、“実名での請求”とする事になりました。

「まずは、内容証明郵便を出しましょう」

スタッフの方はそう言うと、内容証明郵便を書く、原稿用紙のような紙を出しました。
その場で給料・残業代請求の書類を、手書きで作ることに。
文章や書き方を丁寧に教えてもらい、ボールペンで書いていきます。私は字を書くのが苦手で、その時はさらに気持ちが動転していたので、何度も書き直しました。

苦労してようやく書き上げた内容証明郵便。

「郵便局に行って、これを配達証明で出してください。支払い期日を2週間後にしていますから、それまでまずは待ちましょう。」
「2週間後になったら、また来てください。」

そう言われて、その日は労働基準監督署を後にしました。

労基署に「もうできることは何もない」と言われてしまった

内容証明郵便を出して、何か会社側から反応があるか…と思っていましたが、その後2週間、まったく反応はありませんでした。

ちなみに、この段階で私は辞表を出していました。
労基署に駆け込んで、実名で請求を出したこともあり、もうこの会社にはいられないと思ったからです。また、「給料を払わない、こんな会社にいても意味がない」という気持ちもありました。

そんなわけで、職場に出社はしていなかったのですが…。
それにしても、電話やメールで何か反応があっても良いと思っていただけに、がっかりしました。

何もないまま2週間が経ち、ふたたび労基署へ。
前回と同じスタッフの方が、また一対一で対応してくれました。

「何も反応ありませんか。そうなると、こちらでできることは、もう何もありませんね…。」

こう言われてしまい、大きなショックを受けました。
労基署が何とかしてくれる、と漠然と思い込んでいたからです。

話を聞いてみると、この2週間、労働基準監督署も行動してくれていました。
会社宛てに「勧告書」を送ったり、会社まで足を運んで訪問してくれたりと、できる限りのアクションを取ってくれていました。

なんと会社は、私からの内容証明郵便だけでなく、労基署からの勧告も無視していたのです。

「労働基準監督署の勧告は、支払いを強制する力は無いんです。そのことを相手もよく知っているみたいですね。」
「こういう相手には、もう裁判しかありません。この金額だと通常訴訟になりますが…。請求額を60万円以下で手を打つなら、少額訴訟も利用できますよ。」

結局のところ、“労働基準監督署が勧告をしても、自分で内容証明郵便を送っても、何一つ解決しなかった”という結果になりました。

<労働基準監督署に、給与と残業代の未払いを相談した結果>

一回目の面談

・面談を受けて、対応方法を教えてもらった
・その場でアドバイスをもらいながら、手書きで内容証明郵便を作成した。

二回目の面談

・労働基準監督署からも、勧告を出してくれていた
・しかし、状況は何一つとして改善しなかった
・「もうできることは何もない、裁判しかない」と言われてしまった

補足となりますが、私のこの事件があったのは、今からもう10年ほど前の事です。当時はまだ、「労働審判」という制度がありませんでした。(労働審判は、2006年4月よりはじまった制度です)。

現在は「労働審判」制度ができているため、「少額訴訟」だけでなく、こちらも利用できるでしょう。ですが、「労働審判」も「少額訴訟」も、裁判所での手続きとなります。労働基準監督署では、勧告を出す以上のことはできず、支払いを強制することは現在もできません。

結局私は、その段階で疲れ切ってしまい、未払い給与・残業代の請求をあきらめてしまいました。裁判所に行こうかとも思いましたが、これ以上何かをする精神力が残っていなかったのです。

労働基準監督署の勧告には、強制力がない

いかがでしょうか。
特定を防ぐために、一部を改変していますが、筋書きはほとんど事実です。何年も前の話ですが、私自身、新卒でまだ右も左もわからない頃に体験した出来事です。

今でもよく覚えています。

労働基準監督署は、結局、私の未払い賃金・残業代の問題を、解決できませんでした。ですが誤解して頂きたくないのですが、私はこのことで、労働基準監督署を悪く思ってはいません。

親身になって相談に乗ってくれたこと。
内容証明の書き方を教えてくれたこと。
労基署としても、しっかりと勧告を出してくれたこと。
何より、“周りが誰も助けてくれない”状況の中で、はじめて“味方になってくれた”こと。

今でも感謝しています。

ただ、労基署には権限がありません。
労基署の勧告には、支払いを強制させる能力はありません。
権限がない中で、労働基準監督署は、それでも懸命に力を貸してくれました。

もしもあの時、弁護士や司法書士に相談していれば…

私の“敗因”は、精神力を使い切って、疲れ果ててしまったことです。

何か月も続いたブラック労働。
賃金も残業代も払われない日々。

ただでさえメンタルが弱っていた中で、それでも力を振り絞って、労働基準監督署へ行き…。そして、若干23歳の若者が、できたばかりの会社とはいえ、一企業に“対決”の姿勢を取ったわけです。

自分で言うとおこがましいですが、当時の私は、頑張ったと思います。

本当に、ギリギリの状態でした。
そんな状態で、頼みの綱と思っていた労働基準監督署に、「もう何もできない」と言われてしまい、心の支えが無くなってしまったのです。

ですが、だからこそ今、こう思います。
あの時、弁護士や司法書士に頼っていれば…と。

労基署と、弁護士や司法書士とは、できることが違う

当時の私はまったく知りませんでしたが、労基署と弁護士・司法書士とでは、残業代請求で“できること”が違います。

○労働基準監督署ができること

  • 調査をする
  • 調査に基づき、「勧告」を出す … ただし強制力はない

○弁護士・司法書士ができること

  • 調査をする
  • 調査に基づき、「任意交渉」で支払いを求める
  • 「労働審判」を行い、司法の力=国家の力で支払いを求める
  • 「訴訟」を行い、“司法の強制力”で支払いを行わせる

こうして比較すると、残業代請求、未払い賃金の請求などの労働問題は、“労働基準監督署よりも、弁護士や司法書士のほうが、できることが多い”とわかります。

未払い賃金・残業代請求で失敗した私が、今、本当に伝えたいこと

長くなりましたが、最後に、私が今、本当に伝えいたいことを書かせて下さい。

○「まず労基署に行って、だめなら弁護士に…」では、遅すぎます

労働基準監督署の勧告には、強制力がありません。そのため、勧告を無視されてしまうと、結局は裁判になります。
それなら最初から、最悪の場合の訴訟まで対応できる、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

「まず労働基準監督署に…」と思っていると、その分、貴重な時間を浪費してしまいかねません。

○時間、体力、精神力の戦いです

私自身も味わいましたが、未払い賃金や残業代の請求は、本当に精神力を使います。
ただでさえブラック労働でメンタルが弱っている状態で、さらに“会社”と戦うことになるからです。

ただ内容証明郵便を送るだけでも、かなりの精神力を使います。
“効果的でない・効果がうすい行動”に時間や労力を割いてしまうと、それだけ精神力が削られていきます。

そして、疲れ切ってしまい、ギブアップ…。
これが私の体験した、失敗です。

だからこそ、これから残業代請求や未払い賃金の請求を行う方には、“最短距離での短期決戦”を、強くお勧めします。

○一刻も早く、“頼れる味方”を見つけて下さい

もっともお伝えしたいのは、“一刻も早く、頼れる味方を見つける”ことです。

ブラック労働の本当のつらさは、それを体験した人か、その問題に真摯に取り組んできた人にしか、わかりません。

私自身もそうでした。

「お前がたるんでるんじゃないのか?」
「根性が足りない」
「もっと頑張りなよ。」

身近な人たちから、そんな言葉を何度も言われました。

“理解している人でなければ、理解できない”。

それが、労働問題の難しさです。
身近な人が、味方になるとは限りません。

そして、メンタルがどんどん削られていきます。
これは本当に自覚できません。自分でも気づかないうちに、何もできないほど疲れ切ってしまうのです。

だからこそ、“労働問題に詳しい人”を、一刻も早く、味方につける必要があります。

「まだ大丈夫、自分一人でやれる」

そう思っている人ほど、要注意です。
「大丈夫」と思っているうちに、労働問題に詳しい弁護士や司法書士を、無料相談で頼ってみて下さい。

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