残業代請求の内容証明郵便を自分で送る場合の注意点

この記事では、残業代請求の内容証明郵便について、特に自分で送る際の注意点を解説します。

残業代請求は、まず内容証明郵便を送るところから始まることがほとんどです。

内容証明郵便は、日本郵便の「e-内容証明(電子内容証明サービス)などを使って、自分で簡単に作ることもできます。

そのため、「残業代請求のために、まずは自分で内容証明郵便を送ろう」と考える方も多いようです。
ですが実際には、送ってもまったく相手の反応がなかったりと、失敗してしまうケースも多くなります。

残業代請求で内容証明郵便を送る狙いは時効の中断

まずは、「なぜ残業代請求で内容証明郵便を送るのか」について見てみましょう。

・時効の進行を止めるため
・残業代の支払いを促すため

主にこの2つが狙いとなるでしょう。

まず、内容証明郵便で催告を行えば、6か月間は未払い残業代の時効をストップさせる効果があります。そのため、相手が応じるかどうかに関わらず、まずは内容証明を送って時効を止めておき、その間に正確な計算を行ったり、証拠集めをして準備を整える…という手段にも使われます。

また、内容証明郵便は、“こちらの本気度”を印象づける心理的な効果もあります。そのため、内容証明郵便での催告を受けて、相手方(使用者)が未払い残業代を払う…という効果も期待できるでしょう。
うまくいけば、内容証明郵便だけで未払い残業代を得られる可能性もあります。

ですが、自分で作った内容証明を送るだけでは、現実には“まったくと言っていいほど期待できない”と言えます。

内容証明郵便だけで残業代を払わせることはできない

内容証明郵便には、“相手に何かを強制させるような法的効果はまったく無い”という特徴もあります。勘違いされがちな点ですが、内容証明郵便は、「確かにその内容の郵便である」という事を証明するに過ぎません。

「金○○円の残業代を支払え」といった内容証明を送っても、使用者(会社)に残業代を払わせるような強制力は発生しません。

こうしたことを、ほとんどの会社の経営者は熟知しています。
また、中小企業経営者向けの解説サイト等でも、

「慌てる必要はまったくない」
「事実関係を確認中なので、追って回答する」と返信しておけば良い

といったように、経営者にアドバイスされています。
自分で内容証明を送っても、“のれんに腕押し”ということです。

残業代請求の内容証明郵便を自分で送るデメリットと危険性

内容証明郵便を自分で送ることには、デメリットや危険性もあります。

一つは、「相手に準備期間を与えてしまう」という事です。

内容証明郵便を送れば、未払い残業代の時効は、6か月間の一時停止となります。ほとんどの場合、その仕組みは相手方(会社側)も知っているため、「6か月後には訴訟を起こされるかもしれない」と、こちらの動きを予想されてしまいます。

内容証明で時効を止めている間に、こちらが証拠集めなどの準備をするのと同様に、相手方(会社側)も準備ができるという事です。

その間に証拠隠滅をはかったり、同僚に証言しないよう圧力をかけたり、こちらの証拠を無効化するような反撃手段を用意されるかもしれません。

また、残業代請求の訴訟を起こされる前に、何らかの理由を見つけて、逆にこちらを訴えてくる危険性も考えられます。

もう一つは、「内容証明郵便の内容は、裁判になった際に強力な証拠になってしまう」という事です。

内容証明郵便の内容そのものに法的な効力はありません。ですが、「この内容の郵便を送った」ということは、覆しようのない事実として残ってしまいます。

極端な例ですが、たとえば感情的になってしまい、行き過ぎた言葉を使ってしまうと、それを“証拠”として名誉棄損や威力業務妨害で訴えられてしまう恐れもあります。

内容証明郵便は、書いた内容によっては、逆にこちらが不利に追い込まれてしまう場合があります。そのため、内容証明郵便の文面を作成するためには、法律家のアドバイスが欠かせません。

相手方(会社)には、弁護士がついている

残業代請求において、もっとも意識しておきたいのは、“相手方にはプロの弁護士がついている”という事です。

ほとんどの企業には、中規模な会社やベンチャー企業でも、顧問弁護士がついています。顧問弁護士がいない中小・零細企業でも、経営者の個人的なつながりに弁護士がいたり、経営者向けのリーガル・サービスをすぐに利用できたりと、法務体制を整えているのが通常です。

内容証明郵便を送ることは、いわば「宣戦布告」のようなものです。これを受け取った会社側は、真っ先に弁護士に相談し、対応を依頼するでしょう。
そのため、内容証明郵便を自分で送ってしまうと、“素人 対 プロの弁護士”の形になってしまいます。

自分で内容証明郵便を送ることは、“戦力を整えずに宣戦布告をする”ようなもので、これではまったく勝ち目がありません。どれだけ証拠が揃っていても、“勝てない戦い”になってしまいます。

「内容証明郵便は、自分で簡単に送れる」といっても、それは“手続きが簡単”というだけに過ぎません。それを“的確に使いこなす”ためには、プロのノウハウが絶対に必要です。

残業代請求で内容証明郵便を送る場合は、自力ではなく、必ず労働問題に強い弁護士や司法書士のアドバイスを受けましょう。

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